損益分岐点売上を浅く解説!現場で使えて役立つ利益と経費の基礎知識

計算書イメージ

業績は昨年より売れたかどうかがよく問われたりしますが、現実は利益が出たかどうかが大切です。利益が普通に出ていた時代には店長の手腕がその売り上げで評価されますが、会社全体の業績が下がってくると経費をつかって見かけの売上をその場しのぎで作っても結局意味がない事に気付かされます。
そう薄々分かっているけどサラリーマン店長は利益より売上を求める風潮から脱却できず、いつの日か仕事のやる気も空回りしていくことになります。

そうなる前に利益についてしっかり学んで、利益がでることに仕事のやりがいを見出せるようになっておくべきだと思いこの記事を書こうと思いました。そこで利益について学ぶときよく耳にする損益分岐点売上についてしらべるとその仕組みが面白くわかったのでご紹介したいと思います。

損益分岐点売上について

分岐点

損益分岐点売上とは利益を出すために売上を積み重ねていきますが、それに伴い原価や家賃人件費などの経費もかかります。そこでこの位まで売上を作ることが出来たら、その利益と経費がとんとんとなりこれ以降は利益が出始めるというポイント地点の売上高を損益分岐点売上といいます。

損益分岐点売上の計算式は『固定費÷(1-変動費÷売上高)』ですが、式をみてもこれが何なのか見えてこないと思います。
この記事でそれが徐々に解ってくると思いまずが、まずは利益について基本的なことを押さえておこうと思います。

利益と売上について

利益のイメージ

店舗営業の現場で売上実績は把握できます。そのデータをもとに売上目標を立てたりもしますが、1ヵ月や四半期と頑張って売上目標を達成しても利益がいくら出たかは現場では分かりにくいものです。
例えば月に100万売れて原価が40万だから60万儲かったとはなりませんよね。何故なら色々な経費が裏で発生しているからです。その経費には変動費と固定費があり、それら2つを差し引いて残った分が営業利益なります。

変動費とは商品の原価と営業する上でコントロール可能な残業経費や消耗品などの販売管理費(販管費)であり、売上とともに変化(一般的に上昇)する経費の事です。

 

固定費とは家賃や人件費など売上に関係なく固定的に必要な経費であり営業する現場ではコントロール不可能な販管費です。チェーン店などの本部経費などはここに入ります。

これらの経費や利益を売上から差し引いて分かりやすくまとめたものが損益計算書といわれるものでPLと言われてます。
ここまで理解できると下記のPL表が全体的に分かると思いますので、ここからはもう少し利益の計算について深めてみます。

○○年〇月○○年□月
売上高4,500,0003,900,000
売上原価1,200,0001,000,000変動費
粗利益3,300,0002,900,000
   管理可能人件費40,00025,000変動費
   管理可能広告宣伝費100,00090,000変動費
   運送費30,00025,000変動費
管理可能費合計170,000140,000
   管理不可能広告宣伝費300,000300,000固定費
   管理不可能販促費70,00070,000固定費
   管理不可能人件費1,400,0001,400,000固定費
   家賃680,000680,000固定費
   減価償却費100,000100,000固定費
管理不可能費合計2,550,0002,550,000
販売管理費合計2,720,0002,690,000
店舗利益(本部経費含めない)
(粗利益-販売管理費合計)
750,000210,000
本部経費500,000500,000固定費
営業利益(店舗利益-本部経費)
(粗利益-販管費-本部経費)
250,000▲290,000
PL 損益計算書の例

まずこの2つの営業利益の計算方法があります。
①営業利益=売上高-(変動費+固定費)
②営業利益=売上高-原価-販管費
つまり原価を変動費としての経費で考えると①の式であり、原価と経費を別物として考えると②の式となります。

これらの利益計算式は同じものですが何故この2つの考え方を説明したかと言うと、変動費や固定費という用語を知って損益分岐点売上について学んでいくと、その利益が出るギリギリの売上高を理解は出来るのですが、肝心な利益を出すことが頭から飛んでしまうからです。
しかしそこにとどまらず、損益分岐点売上をきっかけに原価や販管費というものに目を向け、PL表を見てどうやって利益を出すのかを考えるところまで行くと、売上と利益がリアルに結びつき仕事のやり方に色々なアイデアが生まれ仕事がさらに楽しくなると思います。

色々な利益の表現について

粗利益(粗利)と言う用語はご存じでしょうか。売上高から原価を差し引いた残りを利益とする大雑把な利益のことです。

そしてもう一つ紹介したいのが限界利益という用語です。損益分岐点売上について学ぶとよく出てくるものですが、文字のイメージがよくわからなくて困ったので、わたしが色々理解したことをご紹介します。ではまず
売上高-原価=粗利益です
売上高-変動費=限界利益となります
変動費の中身は原価とコントロール可能な販管費ですので、粗利益より限界利益の方がより経費を差し引いた利益となります。しかしまだ限界利益はつかみ所のない用語ではあるのでこの後もう少し触れてみます。

そして最後に営業利益があります。売上から全経費を差し引いたもので、これが一番純粋な利益で儲かった金額になります。式で表すと営業利益=売上高-変動費-固定費となります。
先の限界利益の説明で 売上高-変動費=限界利益でしたので営業利益=限界利益-固定費となります。
つまり売上高の中に営業利益と変動費や固定費という経費が含まれているとわかるのと同様に、限界利益のの中には固定費が含まれていると解ると限界利益と言う用語がなんとなくイメージしやすくなると思います。

経費について

ボーダーライン

利益を出すには売上を上げる事ともう一つ経費を抑える事も大きな手段です。経費は先に述べた変動費と固定費があります。そして別表現として原価と販管費と言う捉え方もあります。ここで一度それらの経費の主だったものを一覧にしてみますので、それらの経費をどのように押さえていけばよいかを考えてみましょう。

変動費の種類削減の方法
原価オリジナル商品など仕入れ原価の安い物で品揃えを充実させる
運送費発送回数をまとめるなどして減らす
残業代フレックスでコアな時間に人手を揃える
外注費徐々に自分たちで出来るようにスキルを上げる
固定費の種類削減の方法
給料給料をまかなう売上を個人に理解させて生産性をあげる
通信費FAXや電話をメールに代えていく
広告費紙媒体を止めてネット系にする
減価償却費リースにする

給料分の売上を稼ぐ額の計算は『利益率』を使うと簡単に出ます。
給料の額を利益率で割り算すると出ますので計算してみると現実的です。

給料が20万円で店の利益率が10%なら
20万÷0.1で200万が月間で売り上げて欲しい額です。

業種によって上記の内容は変わりますが、簡単にいうと変動費は売上高が上がるにつれ増えるものですが少しの意識で経費削減が可能ですし効果の即効性もあります。固定費の方は店舗運営の方法を変えるなどの大きな動きになるので経費削減の効果は大きいですがなかなか実現は難しいイメージです。

赤字と黒字について

サラリーマンは自分の持ち場担当の業績が赤字でもとりあえず給料は出るんで会社的にトータルで黒字ならまだ良いのですが、赤字の部門はこの先処分されることになります。自営なら廃業ですが、サラリーマンなら首にはならないまでも自分の持ち場がこの先消えることにはなるでしょう。

赤字黒字に関しては利益が出ていればよいので次のイメージでとらえるだけでそんなに難しくはありません。それは売上=変動費+固定費+営業利益という形のことです。

売上変動費固定費営業損益
100万40万50万10万
100万60万50万-10万

同じ売上が100万としても経費の掛け方で利益がプラスにもマイナスにもなるという事です。
売上における変動費は出来るだけ少なくなる方が良いという事です。かっこよく言うと、売上における変動費つまり変動費率は低い方がよく、対局にある売上における限界利益つまり限界利益率は高い方が良いという事です。

限界利益の中にある経費の部分である固定費は少ない方がいいのですが固定費と言う性質上そこまで削減は難しいので、変動費を押さえて利益を出そうと言う考えでよいのです。

ミニ知識として○○率ってのは魔法の数字でして、例えば粗利率が0.7(限界利益率でもいいんですが)とすると100万円粗利益をあげたかったら100万÷0.7で143万くらいを売ればいいんだなと分かります。

営業利益率を使えば自分の給料分を稼ぐ為の売上高もわかるから、例えば営業利益率が0.1で給料が30万の部下が居たら30万÷0.1で300万の個人売上を目指してと指示できるね。

まとめ

損益分岐点売上=固定費÷(1-変動費÷売上高)という式で計算されると冒頭で書きました。
ここまで説明した用語を使用してこの式を色々な表現に変えてすこし遊んでみます。
(1ー変動費÷売上高)は売上高に占める変動費率の対局ですので限界利益率のことです。
限界利益は固定費と営業利益を合わせたものなので次のようになります。

損益分岐点売上=固定費÷【(固定費+営業利益)÷売上高 】となり割り算はややこしいので
損益分岐点売上=固定費×売上高/固定費+営業利益と書き換えてみます。そしてもしこの営業利益が『ゼロ』だったら固定費が除されて、その売上高が損益分岐点売上そのものになるということになります。なんだか式が身近に感じませんか?
       

最後にすこし頭を使いましたが、要するに日々の営業ではあまり口にしない損益分岐点売上というものだが、経営する上では実は大切なものです。ぶっちゃけ上司と話すときや昇進面談などで議題にされるときに意識するだけで、結構曖昧にしていた事なのでこれを学んでよかったと思いました。その理由は自分の働きで利益が出ている事や、利益を出すために何を考え行動しているかを具体的に言えるようになるからです。

そして①自分が店長として仕事が出来ていると自信を持って言える事、②会社からの評価などに動じず自分の働きを自分自身で評価できる事、③サラリーマンだが会社の歯車にならず自立するための力量を試すバロメーターとして使える事です。

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